ダイヤモンド社の「デジタルエシックスで日本の変革を加速せよ」(今岡 仁 著/松本 真和 著/伊藤 宏比古 著/井出 昌浩 著/島村 聡也 著 みなさま敬称略で失礼します)のカバーイラストを描きました。さわやかで知的な装丁は新井大輔さんです。
デジタルが当たり前の世の中ですが、デジタルを使って便利になる、良いこともたくさんあれば、負の面もありますね。情報拡散力から既存の偏見を増長したり、情報漏洩だったり、AIによる剽窃だったり...というか、なんだかもうこっちの貧弱な頭じゃ考えつかなかったような問題が新たに出てきてる感もあり、社会がSFちっくだなあと感じる今日この頃です。
自分に身近な問題でいえば、だれそれ風の絵柄でこういう状況を描いて、とかAIに頼んだら0.5秒ぐらいで「はいどうぞ」とかなっちゃう世界が到来するとは思わなんだ。あーこわ。なんだったら「大塚砂織風の絵柄でこういうの描いて」ってわたしがAIに頼んだらラクできるんじゃないか、とか訳わからんことになりそうですが、それがアリならクライアントさんがわたしを介さず直接その指令をAIに出すとかもアリなのではないか、とか思うと恐ろしいですね。それ、ナシ寄りのナシでお願いしますね。あーこわ。
って、いきなり脱線気味ですが、まあでも考えてみればデジタルを抜きにしても労働者、それに経営者側はもっと、ですが労働に関わる人は労働倫理を考えなきゃいけないというのは昔からあることなんですが、デジタル社会だとすんごい勢いで「え、この問題どう考えるべきなの?」みたいな新しい事例が起こってくるのでひとりの人間の脳みそじゃ判断がなかなか追いつきませんよね。
そこで、なんらかの倫理的な共通指針があると助けになるということで、デンマークデザインセンターが開発したのが「デジタルエシックスコンパス」というものです。この本はそのデジタルエシックスコンパスを紹介しつつ、日本企業が今後世界でもっと活躍していくためにデジタル倫理を鍛えることの重要性を詳しく書いてるのですが、直接デジタル系の仕事でなくとも、例えばわたしなんかもすでにこのブログはネットを通じて配信してますし、すべての人に関わる興味深いというか必要不可欠な視点だと思います。なお、個人的にはデンマークデザインセンターCEOのクリスチャン・ベイソンさんが倫理の範疇について、「これまでのように人間と環境を切り離した議論ができない」として、これからは人間中心主義を超えて地球主義の観点が必要だというお話をしているというのも印象的でした。
社会や環境のためになることをして、自分たちも利益を得られる、そういうのが真のwinwin、いい感じじゃないかというわけです。いいですね、それ。
表紙のイラストは、直接その「デジタルエシックスコンパス」を描くのでなく、行動や開発、新しい時代に向かっていく指針としての役割をシンプルにコンパスで表現しつつ、倫理に基づく新時代に対するポジティブで清廉な気分をとらえてみました。
イラストって、内容を単に説明するだけでは却ってわかりにくいものになる、というケースもありまして、本の表紙のように見る人に直感的に興味を持ってもらえることが大事なメディアだと、内容を噛み砕いてエッセンスにして、わかりやすく、かつ、興味が湧くようなイメージに再構築する、というようなところも大事なんですが、そのプロセスの中で「本来その本が伝えていること」を損なわないように気をつけるのもある種、イラストレーターの倫理かもしれないなあ...と思ったり。少なくともわたしは仕事をする上でそういうことを考えるのを習慣にしてます(お題回収)。
ま、そんなこんなで社会と自分を倫理やクリエイティブのレンズで点検しつつ、AIちゃんと差をつけてなんとか仕事を続けていきたいのである。(が、「人間より倫理的かつクリエイティブなAI」の到来も近いのかもしれませんねえ...そうなったら、うーむ、ぎゃふん)
今週のお題「習慣にしたいこと・していること」