saoriotsuka-diary

イラストレーター大塚砂織の由無し事を綴るページです。仕事の紹介もしますが、ベランダ園芸の話やたわいない話が多いかも。

書籍「ひとつ以上の言語」ー仕事の紹介

今日は仕事の紹介です。

読書人より刊行された書籍「ひとつ以上の言語」(バルバラ・カッサン 著、西山雄二 ・山根佑斗 翻訳) のカバーイラストを描きました。

この本は外国語に関心がある人だけにでなく、言葉と文化、自分と世界との関わりについて考える人にはとても興味深く、大事な視点のある本ではないかなと思います。

わたしも素人レベルの趣味ですが語学勉強が好きなので、ゲラを読むのが面白かったです!言葉というのが、いかにデリケートで取り扱い注意のものなのかを考えさせられつつ、そしてだからこそどれほど世界は多様で豊かなのかに触れられる、言語の可能性というか知の前向きな力を感じる本です。

 

近年、ネット上やAIでも自動で翻訳などができて、便利な部分も多々ありますが、その言語の持つ独自の文化背景や、その言語でしか掬えない意味を持つ言葉などはあり、やっぱり「人が複数言語を学ぶこと」により広がる他者の文化への理解って大事な気がするんですよね。というか、やはりわかった気になって微妙に誤解したり我田引水で解釈すると、そのズレってどんどん広がってくかもしれませんし。

まーもちろん、それを万人ができるか、というとできないとも思いますし、だからこそ「翻訳者」の人たちはこれからもますます重要だと思います。

さて、わたしの拙い感想だけでもなんなんで、版元ドットコムさんには本の紹介も乗っているのでこちらも紹介しておきますね。この本の面白さ、ここにある紹介を読むだけでも興味を惹かれるかと思います!

www.hanmoto.comイラストは本を読んですっと出てきました(まるでこの絵の鳥のように、って感じです)。自分でもかなりお気に入りです。装丁は坂野仁美さんです。

 

     *  *  *

 

ところで。

この本を読んでて、わたしはある曲を思い出していました。それはSPINVISの「De talen van mijn tong」という2002年の曲でして(またSPINVISか、と思われるかもしれませんがだって好きでいっつも聴いてるんでつい...すみません)、この曲はわたしの拙い語学力で読んだ限りでは、どうやら子供が、難民か移民としてオランダにいるというような視点で書かれているような気がする(歌詞の中に「アラファトみたいな雲を車の中から見た」ともあるのでもしかしたらパレスチナ難民なのかも?)んですが、上で述べたようにわたしが生半可な解釈を書くのもアレだなあと思いつつも、ちょっとだけ紹介しますと、サビのフレーズで

Je hoort me zingen
waar ik ga
In alle talen van mijn tong

という歌詞があって、これは

「きみは聴くのさ

僕がどこにいっても

僕の舌の全ての言語で歌ってるのを」

というような感じになるかと思うんですが、

この"talen van mijn tong"というのが、自分の舌から話される言語なので母語なのかなあとも思うんですが、そこにalleがついていることで、この歌の主人公が多くの言葉を母語としてきたのか、あるいは生きるために身につけた多くの言語のことなのか、わたしの貧弱なオランダ語理解ではちょっとわからないんですが、いずれにしても、子供の頃って言葉に対する順応性があって、わたしも夏休みにおばあちゃんの家に帰省した時にはすぐに高知弁とか覚えてしまったような気がしますんで、そのように体験から多くの言語を吸収してきたのかもしれませんし、あるいは必要にせまられ、たくさんの苦労をして得た言語なのかもしれません。この子がどういう多くの言語体験をして、歌を歌ってるのか、身を落ち着けることのない暮らしなのだろうか、ナドナド、穏やかで暖かく静かな曲調で淡々と歌われる歌詞を聴いてると歌の主人公や、SPINVISさんがどうしてこの曲を作ったのか、あれこれ想像してしまう歌です。

youtu.be

 

(そして、今、自分の国に閉じ込められて上から爆弾を落とされてる子供たちのこともどうしても考えてしまいますね。イスラエルはいつになったらやめるんでしょうか、やめてほしいです、本当に。)

 

人間は言葉でコミュニケーションができるはずなのに、どうしていつまでも相手を尊重して共存できる社会にならないのか、それを考えると、対立や憎悪を煽るのもまた言葉だったりもしますし、それは決して「理解できない外国語」同士だからというわけでなく、共通国語を話しているはずなのに、話が通じない、相手の言ってる事がまったく分からないというようなこともあったりですし、言葉ひとつでわかり合えることもあれば、たったひとつの言葉が永遠の決定的な亀裂になったりもしますし...うーん、うーん。最近わたしみたいなちっぽけな人間には手に余るような世の中の問題が多過ぎて、あれこれ考えて結局言葉にできないままなことも多く、なんとなくお腹の中に今日みたいな重たい曇を飲み込んでるみたいな気持ちが、ちょっと、したままです。

 

そうした気持ちを解決する何かが知りたくて、本を読んだりするんですが、今日ご紹介した本はそんな気分から、考えることへの希望を感じる本ですので、ぜひ多くの人に読まれてほしいです!