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イラストレーター大塚砂織の由無し事を綴るページです。仕事の紹介もしますが、ベランダ園芸の話やたわいない話が多いかも。

菜食晩酌日記 第16回 個性は集団に埋没す?

以前、友達が言ってたことで「なるほどなあ」と思ったことがあります。それは野菜炒めなどをする時に、一品の中に野菜をあれこれ入れると、まあそれもおいしいけど、そうすると「全体にただおいしい」になってしまうのですが、あえて使う種類を抑えて野菜1品とか2品などでシンプルに炒めると、「その野菜が」おいしいなあ、というのがしみじみ分かるということです。確かにそれ、あるんですねー。

 

いろんな野菜のハーモニーが楽しめる八宝菜的な炒め物も好きだしよくやるしそれはそれでおいしい。のですが、たまに、なんだったらもやしだけで塩コショーとか単純なものをぱぱっと作ると案外「ああ、もやしってうまいな」と感じられて楽しかったりもするんですよね。

もやしとか、他に豆苗には特に感じるんですが、他の野菜と混ぜてしまうと「あれ?豆苗どこいったっけ?」と存在感ナシナシになりがちなんですよね。なんだかそれはもったいない。むしろそれだけで塩コショーとかニンニク風味で炒めた方がおいしいと感じます。中華料理の一品料理、豆苗炒め、空芯菜炒め、ああいうノリですね。

 

よく野菜でチヂミを作るんですが、お好み焼きと違って、チヂミは一種類の野菜だけで作るのが好みです。

 

これは春菊のチヂミ。昔はじめてチヂミを作ろうと思って見たレシピが粉少なめ(少しの小麦粉と片栗粉同量だけです)だったんで、うちではいつもこんな「春菊のカタマリでござい」ってな雰囲気のものになるんで本場のヂョンとはなんだか違うものになってるのではないかと思いますが。

でもこの粉少なめレシピ、野菜の味そのものって感じでおいしいです。酢醤油でいくらでもビールが進む。

 

また、2つぐらいの材料種類のタッグ、「この組み合わせでこの調理法」がぐっとくる、というやつも結構あります。子供の頃に知った料理や、居酒屋で知った料理が多いですね。

うちの定番の「この組み合わせで決まり!」はこんな感じです。あくまでわたしの味覚の主観なんで、みなさんの好みとは違うかもしれないのであしからずなんですが。

 

カリフラワーとにんじんのスープ

カリフラワーと千切りにしたにんじんを炒めてからスープにしたもの。炒めたら水をいれて、少々の野菜だし(なくてもよい)、醤油、コーンを入れるだけというシンプルなスープ。この組み合わせ、にんじんやコーンの甘さとカリフラワーから出る風味がすごく合うんです。カリフラワーっていい出汁出ますよね。これを拡張するとポトフになると思うんですが、カリフラワーとにんじんだけでも十分おいしいです。

 

ほうれん草とコーンのマヨサラダ

子供の頃給食のメニューだったこのサラダ。ほうれん草を茹でて、コーンとマヨ、塩コショウで和えるだけなんですが、ほうれん草の食べ方としてかなり好きです。これを小松菜で置き換えてやると同じようにおいしいように思われますが、うーん、なぜかそうでもない。やっぱりほうれん草がいいです。マヨを入れすぎると「マヨ」になってしまうので、若干控えめで、あればブラックソルトを少しかけると吉。

 

ゴーヤのくるみ和え

これは以前にも書きましたけど、ゴーヤを薄切りにしてちょっと茹でて、くるみなどナッツを刻んだものとペーストにしたもので砂糖醤油みたいな感じで和えたもの、ゴーヤの苦味とナッツの濃厚さを少し甘い和え衣が包み込んでオツです。

 

春菊のくるみドレッシング

これは上のゴーヤと同じ原理で春菊のほろ苦さとくるみが合う。春菊の場合は、エゴマ油とか亜麻仁油をちょっと効かせて、それでいてさっぱりと醤油麹黒酢ドレッシングみたいにするといい感じです。海苔とかトッピングしてもいいですね。メインにはあまり他の具材は入れず、ひたすら春菊のおいしさを味わいたい感じです。写真は豆腐ステーキの付け合わせ的に盛ってます。

同様に、にんじんもくるみと合わせるのが定番でもちろん好きです。これは世間的には「キャロットラペ」というやつなんだと思うんですが、よくあるキャロットラペのレシピにはレーズンとかドライフルーツも入ってることが多いんですが、個人的にはドライフルーツ類を入れると甘すぎというか、にんじんだけの甘みを味わうぐらいがちょうどよいです。にんじん、くるみ、あればクレソンとかパクチー、その三つで、こちらの場合のドレッシングはレモンとマスタード、オリーブオイルに塩、っていう感じが好きです。

 

ジャガイモとグリンピースのサラダ

にんじんサラダのドレッシングと同じ味付けで、細切りにして茹でたジャガイモとグリンピース、という組み合わせも好きです。じゃあ、これににんじんとくるみとパクチーも入れたらいいんじゃない?とは、ならないんですねー。それはちょっとメンバー多すぎ、というか、同じステージ上にドラマーが三人もいなくていいじゃろ、みたいな感じになっちゃうんですねー。過ぎたるは及ばざるがごとし。

 

にんじんと大根のなます

和食の定番ですが、間違いのないおいしさです。ゆずの皮なんかちょっと入れると最高ですね。というか、和食は野菜1〜2種類でおいしいみたいな調理法の宝庫です。胡麻和えとか、酢の物とか、煮びたしとか。

 

上記のようなメニューは、挙げた材料以外に、ついでだからあれも入れようかな、とか余計なことをすると、なーんか味がぼやけて、残念だったなーって感じになりがちです。やはり個性を生かすには引き算の美学なのか。

が、しかし、そうでもないメニューもあります。豆のサラダとかは、トマトやらセロリやらケールやらピーマンやら、ある野菜も全部豆と同じぐらいにきざんで入れると大変おいしい。野菜の宝石箱なんじゃよ。

というわけで、今日の趣旨をひっくり返すようですが、いろいろ入ってる「総勢百人の合唱団的魅力」を持つ料理も、まあ、ありますね。

 

なお、菜食びと的にはひとつ思うのは、肉を食べてた時には気づかなかったんですが「この料理、肉入れないほうがむしろおいしいな」ってもの、結構あるなーと思います。別に菜食びとでなくとも、たまには試してみるのも愉快ではないかなと思います。どの組み合わせがどの野菜の知られざる魅力(家庭料理なのにそんな大げさなもんでもないですが)を引き出す、自分の味覚にぴったりなコラボレーションの妙を生み出すのか、発見するのも大人の楽しみ?かも。

 

ではまた。