saoriotsuka-diary

イラストレーター大塚砂織の由無し事を綴るページです。仕事の紹介もしますが、ベランダ園芸の話やたわいない話が多いかも。

カレンダーについてのお話 2月(25年越しのうれしい知らせ)

noranoha.thebase.in

 

さて、カレンダーの紹介、今回は2月です。カレンダーの絵を描いてて、実はこの2月が一番最後に出来た絵だったんです。というのも、あと一枚、何描こうかなーと考えあぐねていた時に、1通のメールが届きました。

 

それは、なんとわたしの25年前の展覧会に来てくれた方からのお手紙で(!)、その展覧会の後に芳名帳にいただいたお名前になんとなく見覚えがありました。当時、芳名帳に名前を残してくれた方にお礼の絵葉書を送ったのですね。

メールには、その方が展覧会を楽しんでくれた事、その後その絵葉書をずっと手元に持っていてくれた事、そして、その絵葉書にはこびとの妖精の絵が描いてあったんですが、そのこびとの妖精をモチーフに、なんと物語を作ってくれたという事が書かれていて、その物語も添付されていたのです。

 

いやー、そんな昔の事を覚えていてくれただけでも感激なのに、まさかそんなお話まで届けてくれるとは、予想もしなかったので本当にうれしかったです。葉書の妖精は一人でしたが、仲間を加えて3人のこびとが登場し、夢を叶える妖精と、そしてここが意外だったのですが、現代を生きる少年の思春期の将来への不安や期待とが交差するすてきな物語でした。むしろわたしが描いた何気ない絵から、そこまでのお話が広がるとは、こちらのほうこそ人間の想像力、創造力の力を教えていただきました。

実は、わたしの手元にその肝心の絵葉書がもうありませんで、写真を送っていただいたのですが、お子さんがつけたシミや汚れなどもあり、それだけ長い年月ともに過ごしていただけたのだなあとさらに感激でした。

 

そこで、わたしも逆にそれに励まされ、ふたたびこびとの妖精をモチーフに、いただいた物語世界をまた絵にしてみようかな、と思い立ちまして、そんなわけで出来ましたのがこの絵です。こびとの名前はピッコロ、リンディ、ローランド、少年の心の奥底に隠れている本人の夢を縫い合わせて形にして、少年に気づかせてくれるのです。これが、夢を例えば直接えーい、って魔法の棒を振って叶えるような形ではなく、あくまでこの夢は少年が元々持ってて、自分の中で漠然と形にならなかったもの、その夢に形を与えたというのが本当にいいなあと思いました。

 

遡って、昔話。この方が来てくれた展覧会は、わたしがイラストレーターとして独立するきっかけとなった初めての大仕事で、AGFのコーヒーMAXIMの広告ノベルティグッズを製作する仕事の一環で東京、横浜、大阪、福岡の4都市で展覧会を開催していただいたという今では信じられないようなラッキーな出来事でした。その仕事を契機にはわたしは会社員を辞めてフリーランスの道に飛び込んだのですが、今にして思えば無謀だったかなとも思います(が、なんとかどっこい生きてますが)。

ノベルティのコーヒーカップ。今見返すと、けっこうかわいいな、なんて自画自賛したりして。

 

会社員をしていた時、仕事が本当に自分に向いてるのだろうか、と思ったりしながら過ごしてたのですが、ふと「絵を描いて生活できたらいいな」と心に浮かび、「画学校に通う自分の姿」のイメージが浮かんだのですね。そう想像したら楽しくて、善は急げとセツ・モードセミナーの抽選に応募。その時から、こんにちの自分に至る道が始まったのですが、そのイメージはピッコロ、リンディ、ローランドのように、自分の心が描いた夢が作ったのかもしれないなと思うとなんだか感慨深かったりも。そう思うと、今の自分にはどんな夢が思い浮かべられるのかな、と自分を振り返る機会になりました。そんでもって、わたしのピッコロ、リンディ、ローランドが再び働いてくれたのか、実は今後挑戦したいなあと思いついた事がありました。来年はわたしもそれを形にすべく、がんばってみようかなと思います(まだナイショですけど)。

 

さて、カレンダーのイラストはわたしの好きな夢の曲、シューマントロイメライのイメージも入れてみました。糸通しについてる顔ってなんだろう、と前から思ってたんですが、あれって諸説あるんですが、「誰でもない」という説もあるんですって。なので、この絵ではシューマンの横顔を入れてみました(小さくてわからないぐらいですが...)。

これからも自分の夢も、そこから広がる人との出会いも、か細い糸でも縫い合わせてゆきたいものですね。