saoriotsuka-diary

イラストレーター大塚砂織の由無し事を綴るページです。仕事の紹介もしますが、ベランダ園芸の話やたわいない話が多いかも。

コンポスターは真実の魔法使い その2 バケツよバケツ...

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さて、前回は長々と各コンポスターの特性について書きましたが、今回もさらに長々書きますよ(アラート)。わたしがやってるのはその中でもちょっと微妙なバケツ型コンポスト(バケツ型コンポストとは、バケツ状の蓋付きの容器で下にコックがあって水抜きができる専用容器の事で、本物のバケツではありません※1)です。

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こういうのです(この黒い容器は2代目で、後ろにちょっと見えてる1代目はパッキンが壊れてダメになったんでキエーロにしてます)。上にあるのは投入時に入れる米ぬかです。

 

なぜバケツ型コンポストにしたのかといいますと、わたしがコンポストに興味を持った頃には、キエーロなる存在はまだなかったんですね。で、市外密集地の集合住宅に住む地面なし人間には、ダンボール型とバケツ型と電動型が現実的に選びうる選択肢だったのです。

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でも、電気を使うのはなんだかやっぱり腑に落ちぬというか、環境負荷の面では不利かなと(わたしの場合はです、状況によっては電気代をかけても有効活用によりメリットを得る場合もあるかもしれません)。

で、ダンボールですが、ダンボールなんてあーた、ベランダとかの吹きさらし環境でやったらあっちゅう間に箱自体が劣化しそうじゃないですか(すみません、使ってる方から異論が出そうですね、わたしのその当時の印象です、あくまで)。かといって室内にコンポスト置く場所はないし。

バケツ式なら密閉型で、万一やばい事態になってもその中で完結するから、被害は最小限かなと思ったわけです。

                                               

コンポスト初心者にとって一番不安なのは「やばい事態」。つまり破局的展開、わーもう手に負えん!に陥る事なのではないでしょうか。その場合を考えて一歩が踏み出せない人も多いかと思います。というか、どういう状態が「正しい状態なの?」と思う方も多いと思います。では、わたしの体験とともに、バケツ型コンポスト(以下コンポストと略)のステータスと、若干やばい場合の処世術などを説明していきます。

 

 

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◯バケツ型コンポストの基本的な運用方法

 

1.ベランダなどの外に容器を設置します。

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2.三角コーナーなどで水気を切っておいた生ごみをできれば小さめに切って投入します。

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3.上から米ぬかやバケツコンポスト用のぼかし※2を洗剤スプーン一杯ぐらい(生ごみ

量により適宜、全体にまぶすぐらい)かけます。

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4.蓋を閉めます。

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ーーーここまでが日々の運用ですーーーー

5.時々、下のコックから水抜きをします。

水分過多は破局へのプレリュードですんで、この作業は忘れずやるのが吉です。で、よくある説明で「この、下から出てきた水は良い液肥になります」とか書かれてますけど、正直利用するのがためらわれるほどには臭いです(解説などで、「消臭になるのでトイレに流す」とか書いてあるのも読んだ事あるんですが、一体どこの世界線の話なのかと思います。これ自体が臭いの元なのでは...?)ので、わたしの場合近所への悪臭問題になると困るのでベランダの排水口から水とともに流して捨てており※3、流した後さらに臭い消しにレモンのエッセンシャルオイルを播く事があります。

 

6.コンポストがいっぱいになったらそのまましばらく寝かせた後、土に埋め替えます(二次発酵)。これは集合住宅なので底の深いプランターにて行います。

土に埋める際はこういう塩梅です。

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土、コンポスト、石灰と米ぬか、土、というサンドイッチ構造にします。この作業は、まあちょっと匂いもありますしもしかしたらハードル高いと感じる人もいるかもしれませんが、1時間ぐらいで終わりますし終わったらアラすっきり、もう匂いません。匂いを封じるカギは一番下の層と一番上の層は土にして生ごみを封じる事です。作業後、コンポストを入れてたバケツは水洗いしてもよいですが、なんなら洗わなくともそれにも土を詰めとけば残渣も匂いも分解してくれるんで楽です。暖かい季節なら1ヶ月ぐらい、冬は3ヶ月ぐらいでよい堆肥を含んだ土になります。

これは半年に一回ぐらいのルーティンで、わたしは虫がいない晩秋と早春(11月と3月)ぐらいをめどにやってます。例えば「真夏にいっぱいになっちゃった」という場合、秋までバケツを密閉したまま時々水抜きだけして放置しておいて大丈夫です。このルーティンを行う為、バケツ容器を2個体制で回転運用します。

仕込んだ後は土が分解してくれるのを待つばかり(分解が進んできたらたまにスコップで切り返すとなおよし)。

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これはまだバナナの茎とか若干分解されてない(この状態ではもう匂いはない)。

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このぐらいだともうすっかり分解されてる。

 

 

 

◯必要なもの

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コンポスト用バケツ型容器(2個)

・米ぬか、あるいは生ごみ処理用ぼかし

・三角コーナー

・スコップ

・石灰

コンポスト二次発酵用の鉢と底用網

コンポストを埋める用とバケツを満たすぐらいの土

あるとよいもの

・レモンのエッセンシャルオイル

 

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さて、懸案事項ですが。

 

●腐敗について

ごみを投入し続けると、白カビが出るのはコンポスト的には正常状態です。青カビが出た時は、まああまりよろしくない状態ですが、その場合米ぬかや土を投入してコンポスト内の水分を抑えつつ、分解を促進させます。

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コンポストは蓋をあけると匂いがあるのが正常状態ですが、その匂いは発酵臭というか、生ごみの腐ったのとは違う「まあ許せる匂い」です。許せない匂いを感じたら、それはやばい状態へのサインですので、乾いた土をかけときましょう。

コンポスト内状態を良好に保つコツ、それは「水分を制する者はコンポストを制す」です。水分が多いのは不幸の元です(少なすぎると発酵が進まないというのはありますが)。ある程度ごみの水気を切ったほうがよく、わたしの場合、1日のごみを「水のかからない場所で」三角コーナーなどに入れ、一晩乾かし気味に管理したものを次の日(少ない時は何日か分)コンポストに投入します。

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それと、ここで皆さんの参考にあまりならないチート情報(?)になるかもしれないのですが、わたしの場合菜食なんで「動物性のごみが全然ない」というのも腐ったりやばくなったりしにくい要因なのかもしれません。野菜くずや果物の皮って、水気がなければほっといてもしなしなになるとかそんなもんです。

また、発酵か腐敗かは人間にとって有用かどうかで分かつというお話もありますね。バケツの下の層は最後に取り出す時、結構分解してぐだぐだになってる事もあるんで、それは腐敗と言えるのかもしれないんですが、そうなってるほうが土に埋めた時早く土に還るとも言えますんで、腐敗は恐るるに足らずだと思います。よくバケツコンポストの説明をネットなどで読んでると「◯◯の状態になった場合失敗ですので捨てましょう」とか書いてあったりしますが、え、そんな破滅状態のバケツをどうやって...まさかバケツごと?つか、そう簡単に捨てられるかっつーの。とわたしなんぞは思ったりするわけで、とりあえずそういう場合は水分の少ない土をかけときゃなんとかなります。

 

●むしむし虫ちゃん、カタストロフ?

まあ、ですが、そうは言っても、夏場などにコンポストをやってると、やはり虫の問題は出てきますね。それを避けるには「とにかく開閉時間をすばやく」という事です。その為には生ごみはあらかじめ三角コーナーに入れる際に包丁で細かく切っとくなどの下ごしらえが成功のカギです。しかし、わたしは横着してバケツに入れた時にハサミでちょきちょきやったりするんで、そういう事をのんべんだらりとしてると、ときどき、目ざとい虫ちゃんたちがやってきちゃうわけですよ。来ないで済む時もあります。そういう時も多いです。ただ、来た時に「こんなはずじゃなかった!だまされた!ひぃー!」となると思いますんで、その辺も包み隠さずお伝えしていきます。

 

えーと、というわけで、ここからは虫ちゃんが苦手な方には引き返していただいたほうがいいような核心に迫るんですが(アラート)。コンポストにいらっしゃるお客さんは主に3種類でして(安心してください図解はないです)、

 

1. コバエとそのお子さん

コバエ自体も苦手な方もいると思うんですが、わたし的には、まあちっちゃいやつがぷあーと蓋を開けたらちょっと出てくる程度ならそんなでもないです。問題は、彼らがコンポスト内で卵を産みまして、まあ、お子さん(いわゆるU・J・Iと呼ばれる方々です)が繁殖したり、さなぎになったりする事がありますね。これは結構見た目は...。ただ、彼らも分解を助けてくれるんで、すごい嫌じゃなければ同居しといても、季節が移ろい、北風が吹く頃にはすっかり跡形もなく去っている事でしょう。それと、コバエが増えると、わがベランダではハエトリグモちゃんも増えるんですよ。そして蓋を開けた時にぷわーと脱出しちゃったコバエ問題を解決してくれてるようで、外にコバエ成虫が増えちゃった!とかないのですねー。さすがハエトリグモという名前だけありますね。心強いです。なので、もう大変!みたいな事にはならないです。

 

2. Gさん

Gさんはわたしも大変苦手でして、できれば(というか可能な限り)同居したくない。ですが、奴らは他の飛来系の侵入者ハエ氏やアブ氏に比べればまあまあ体がでかいし徒歩でご来訪の可能性が高いので、見張ってれば存在を検知して侵入を防げる気がします。

あと、彼らが苦手らしい匂い、レモンのエッセンシャルオイルなどを定期的に水で薄めてコンポスト周辺に撒いとくと吉かもしれません(注:レモンエッセンシャルオイルは猫にも有害です。だいたいGさんが苦手なもの、ハッカ油とかラベンダーとかそういうものは全体に猫にも毒です。Gさんの一種なのか猫よ...。というわけで、猫と同居してる方は、猫がいる時や場所には撒かないでくださいまし)

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猫に毒なものは日常にいっぱいある。危険危険。

 

わたしが8年やってて、Gさんとコンポスト内で同居した事はありません。運がいいだけかもしれませんけど。Gさんは水気のあるところと、人間がくさいと感じる匂いがするところが好きですんで、コンポストの密閉を保ち、周囲をじめじめさせなければまあ大丈夫ではないかと思います。

 

3. アメリカミズアブのお子さん御一行さま

アメリカミズアブとはなんぞや。と思ったあなた、うかつに検索する前に心の準備をしてください。お子さんの写真が出てくると思いますが、これがまあ結構一般受けしないルックスです。なんでしょうねー、人間、「顔」がわからん生き物っていうのはなんだか恐怖が増すんでしょうか。しかも!彼らがコンポストにご滞在になられる際には、団体様御一行なんですよ。わたしも初めて遭遇した時には卒倒するかと思いました。

しかし、調べてみると、彼らの分解能力は優れていて、コンポスト的には役に立ってくれてる、というのもあります。別に素早く動いてこっちに襲いかかるわけでもなし、中でなにやらごにょごにょご飯を食べてはせっせと分解してくれてるだけな健気な方々です。(ただ、彼らがいるとコンポストから独特なちょっと不快な匂いがします。腐ってるのとは違うんですけど、なんかヤ!って感じです)。

ちなみに、彼らの旺盛な分解能力とカロリー還元効率から、むしろ最近は益虫として様々利用が検討されてるぐらいらしいです。まあ、わたしとしては、偶然同居した際には役立ってくれるならいいかな、ぐらいで、虫ちゃんを人工的に増やしてなんかしてこーしてあーしてさらには商業的に大規模に...、みたいなのは、虫ちゃんの幸福的にどうなのかなあ...とか、はたまたタンパクどーのこーの的目的で食利用とかになると特に「えっ?昆虫食べるの?豆があるのに?豆でよくない?怖いし」※4とか、いろいろ考えなくもないんで、どうかと問われれば賛成じゃないですが。

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まめまめファンクラブ。豆かわいい。豆おいしい。豆栄養豊富。

なお、成虫には口がなく摂食しない為、ハエのように食品などに病原菌を媒介したりする危険もないらしいですし、彼らの寿命は我々人間に比べたらはかないもんです。つか、成虫はほとんど見かけないです。

そういうわけで、自分の忍耐力ステージを上げ、共存する覚悟を決めたらまあなんとかなります。それを「なんとかなってる」と感じるか、破局と感じるかによって事態は全然違うと思いますけど。レッツポジティブシンキング!(...ごめん、万人向けじゃないのは感じてます)

なお、わたしの場合、8年間で3回出ました。気をつけてるつもりでも、どうも知らないうちに飛んできて卵産んじゃってるらしく、気付いたらコンポスター内が後の祭りだ祭状態なんで、防ぎようがないんですよね。なのでしぶしぶ共存して、秋に土に埋める際にさなぎなんだか幼虫なんだかよくわからん状態の彼らを、いつもどおり一緒に土に埋めます(ほんらい土の中で蛹になるらしいので)。そうすると、コンポストが土にすっかり還った頃には、彼らも成人して飛んでったか、滅びたのか、とにかくまあいなくなっちゃいますね。抜け殻を残してる場合もある(そしてそれの見た目も怖い)んですが、ま、いつかは分解されるんで。

 

トータルすると、虫ちゃんご来訪については、予防策を講じつつ、「汝の隣人を愛せよとまでは言わずとも、普通に隣人として付き合う」って感じでしょうか。まあ、人間が「虫怖い!」と思ういっぽう、現実的に言えば虫たちやありとあらゆる生物にとって一番脅威になってるのは人間だという見方もできます※5し、超大量発生とかされると流石にどうにかしないといけないかもしれないですが、本来なら地球の摂理では歓迎すべき分解者ともいえますし、多少なら人間にはもっと虫に目くじら立てない心が求められているのかもしれないですね(って、自分だって恐怖を克服できてるとは言い難いですが)。

ええ、たぶんここまでで「わたしは絶対バケツコンポストはやらない!」と思われた方、いると思います。さもありなんです。わたしもちょっと、マニアックな事やってんなー、って自覚もありますね。

それか、いっそのこと「真夏はコンポストはお休みする」という方針を採用すれば、虫ちゃん遭遇リスクはぐっと下がる気もしますが、夏場こそ台所に生ごみがあるのもアレなんでちょっと本末転倒というか。

 

若干アレな話題が続いたんでここでコンポストのおかげですくすく育つベランダの花や野菜などの写真でも。

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野菜かわいい。

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窓の外すぐに今晩のサラダが。ほほほ。

 

とまあ、ここまで、バケツ型コンポストの(やや悪口も多い)解説を行ったんですが、でも、省スペースで安定して処理できるんで市街地型生活向きですし、できた堆肥は良質で植物はよく育つし、本当、最後は全てが安寧な土に戻るさまがすがすがしいんですよ。日々の作業は「バケツを開けてごみ捨てて閉めるだけ」なんで、なんも難しくもないですし、わたし的には楽しいです。臭わないので周囲にも全然迷惑はかけませんし、上記の虫ちゃん問題も、あくまでコンポスト内での悲喜こもごもであって、決してうちの中とかご近所とかには進出しないです。

 

ですが、以前畑を借りてた時に、野菜の残渣を畑の隅っこに埋めといたら、すんごい規模で土に還るのを見て感動というか、人間がバケツだのなんだの愚策を弄するのをあざ笑うかのようにただ!埋めるだけ!で、土は易々と全てを飲み込むのを目の当たりにしました。そうなると、バケツとかまどろっこしいんじゃね?と思ったりしたんですが、そこにキエーロですよ。いいですねキエーロ。置く場所があったらやってみたいです。というか、最近はプランターでちょっとキエーロっぽく運用するのも並行しています。ただ、やっぱりこれだけだと処理量とスピードが追っつかない。特に冬場は分解が遅いですしね。やっぱり土の多さがカギですね。しかしキエーロを置く場所もないんじゃよ。なんで、やっぱり当面はバケツ型のお世話になりそうです。

 

 

 

※1

本物のバケツでやるのは、密閉度とか水分管理とかちょっと難易度高いのではないでしょうか

※2

EM菌を利用したぼかしなどよく売られていますね。EM菌については似非科学的な利用法が流布してるなどの問題もあるようで、わたしも別に肯定派とかじゃないんですが(つかよく知らん)、生ごみコンポストにだけ関して言えば、普通に使えます。が、別に米ぬかだけでも問題ないですし、落葉樹の枯葉や、納豆の残り(残る?全部食べちゃうけど?残しとくというか?)、あれば籾殻くん炭なんかも少し入れると有用菌が増えて吉です。

※3

これはBOD(生物化学的酸素要求量=水中に含まれる有機物が微生物分解される際に消費される溶存酸素量)が高いような気がするんで(ごく少量なんで気にしなくてもいいかもしれませんが)原則的にはあんまり環境にはよくないかも。できる状況ならやっぱり液肥にした方がいいかもしれません。

※4

昆虫食とプラントベース食のカロリー効率比較の資料は見つからなかったんですが(一般的な食選択と環境インパクトのデータ考察結果はOur world in dataにありますが)、昆虫食は結局家畜システムなんで飼料問題の観点では動物に比べると飼料効率がよいとは言っても飼料は同じくコーンや大豆由来が主らしいので土地使用が人間食料と競合というか、その土地で家畜迂回のない人間用の大豆など穀物栽培をした方が最もカロリー効率は高いんじゃないかと推測しますが、どうなんでしょ。

※5

こことか、こことか、こことか、こことか見ると、枚挙に暇がなくああもう本当ごめんって感じです。