saoriotsuka-diary

イラストレーター大塚砂織の由無し事を綴るページです。仕事の紹介もしますが、ベランダ園芸の話やたわいない話が多いかも。

ウォールデンに住んだら忙しくて仕事どころではない

仕事以外の気分転換というと最近はもっぱらひとけのないところを小一時間ぐらい散歩する事なんですが、ちょっとした林の中を歩いてるだけでもいろいろ発見があります。「苔は木々の北側に生える」と歌った歌手もおりますが、ほんと、そういう事がこまごま気になり、分かると面白いもんです。例えば、この絵の中で言うと、この林は左手が南向きで、木々はやっぱりそっちのほうになんとなく向かって生えてるんですね。また、手に持ってる枝のきのこ、枝は地面に落ちてたんですが、きのこというやつは光合成を全くしないわけで、では何をめざして彼らは成長してるのかというと、彼らが感じているのは重力なわけです。ニコラス・マネーという人の本に書いてあったんですが、きのこにとって重力は非常に大事で、それは傘から胞子を落とす為だそうです。胞子が下向きに発射され、それが風にのりどこまで飛ぶのかが重要なのです。というわけで、このきのこが生えてる枝は右側が地面に接地してたのですね。

 

 最近林でよく悲しい発見もします。神奈川県一帯ではここのところ、大規模に「ナラ枯れ病」が発生しており、公園に行くたびに枯れたナラが切られちゃってるんですが、うちの近所の谷戸山公園という場所では、なんと250本以上ものナラがやられてしまって、林がすっかすかになってしまっています。「風の谷のナウシカ」で、風の谷に飛行船が墜落したせいで村の果樹園が腐海の胞子に飲まれちゃって、「ああ、この木も...」みたいな絶望シーンがありますが、まさにあれなんですよ!どうしてくれるの!そのナラ枯れ病はなんで起きるかというと、カシノナガキクイムシという虫が木を食害する際に、彼らが「ナラ菌」を運んでしまう伝染病なんですね。というわけで、伐採と消毒が行われてるんですが、カシノナガキクイムシには天敵はいないのかしらん、と思ったら、ルイスホソカタムシという、まあ同じ木を食べる種類なんですが天敵がいるそうです。また、コゲラとかそういう鳥たちもつついて食べたりするのでは、と思うと、殺虫剤を撒いて対策、というのは対処療法ではありますが、なんとなく根本解決的には鳥や虫など多様性を減ずる方向ではなく、増やす方向の方がいいんではないかなあ...。と思ったりもします。

 昔、散歩中に出会った自然派カメラマンっぽいプロっぽい人(なんじゃそりゃ)が、昔に比べてこの公園の動植物が減ってるのである、君らも気をつけて見てみるがいい。と言ってましたが、わたしも公園散歩歴は長く、実感としてそういうの、感じるんですよねえ...。少なくとも、きのこは減ってる感じがします。きのこというのは、土壌中でワールドワイドウェブならぬ「ウッド・ワイド・ウェブ」を形成してて、要するに菌根菌ネットワークで木と密接に関わりあってるそうです。世界の大樹、長寿樹を調べると多種のきのこと菌根菌で繋がってるとかいないとか。多様性マスター、きのこなくして世界なし。というわけで、散歩しながら足元の菌根菌に思いを馳せているのですが、端から見るとただ下を向いてぼんやりうろうろしてるヒマ人風情満開の人です。まあ、ソロー先生も日がな1日ありんこの戦いとか眺めて過ごしてちっとも悪びれなかったですしね、自然観察はとにかく飽きませんし、その事について書かれた本を読むのも超楽しく、そんな事ばかりしてると仕事時間はいったいどうなってるのか、というと仕事もするわけで、結果的に慢性睡眠不足です。しかし、マスクして森を行く(たまに人とすれ違うんで、やっぱり用心しています。すっかりマスクに慣れましたねえ...)現代のこの状況を見たらソロー先生は何を思うんでしょうねー。自然をないがしろにしたせいである、と喝破しそうですね。うん。